増殖糖尿病網膜症について
網膜は、外の世界から眼内に入ってくる光を電気信号に変換する大事な神経の膜です。
そしてこの網膜には沢山の血管が張り巡らされています。
糖尿病にかかると、血液中の血糖が高くなります。
この高血糖が長期にわたって持続すると、網膜に張り巡らされている血管が徐々に痛んでいきます。
そして網膜に無数にある毛細血管が詰まっていきます。
毛細血管が詰まってしまうと、網膜へ酸素や栄養が行き渡らなくなり、網膜は虚血という状態に陥ります。
酸素と栄養が極端に不足した状態です。
虚血状態が持続すると、本来網膜には存在しないはずの異常な血管が、あるべきはずではないところに無秩序に生えてきます。
この異常な血管を新生血管といいます。
新生血管はその構造が脆弱なため簡単に破綻して出血(硝子体出血)したり、増殖膜という構造に発展して、これが網膜を牽引して牽引性網膜剥離などをおこします。
硝子体出血や牽引性網膜剥離が生じた場合、硝子体手術が必要となります。
出血で混濁した硝子体を切除したり、増殖膜を細い鑷子(ピンセットのこと)や小さなハサミで切除します。
また網膜剥離がある場合は眼内にガスを注入して術後にうつぶせになっていただくこともあります。
また網膜の虚血状態を改善するために手術中にレーザーをうちます。
増殖糖尿病網膜症は硝子体出血が主体のものから、増殖膜が発達して牽引性網膜剥離にいたるタイプまで様々な状態があり、増殖膜が発達したタイプはその治療がとても難しくなります。
増殖糖尿病網膜症が更に悪化すると、失明の危険のある血管新生緑内障というとても治りにくい緑内障に発展してしまうことがあり、治療を辛抱強く続けていかなければならない重要な疾患といえます。